
レナウンのやり方
「一〇〇人いればー〇〇のBがある。
社員の数だけBがあってもいい」と語るSは、個性的な人間の集合体としての強みを活かしてきた。
それは、前述した外部クリエイターとのかかわりと共通する。
つまり、「個性の強い人材」による組織体としての創造力には強い。
そうやって、動物園のように多様な人材がいれば、おのずとおもしろいアイディアが湧いてくる。
二〇〇〇年にオフィスを移転するに際し、旧オフィスの活用方法を社内応募したところ、二五〇案くらいが集まったという。
映画館、クラブ、学校など、実にさまざまなアイディアが出てきた。
S自身も、予想以上に変わったプランが出てきたことに、改めて驚かされたというこレしだ。
Mは、「Bはいい意味でゆるい会社。
ブロイラーの集団ではなく、動物園という表現がふさわしい」と見ている。
つまり、皆に同じエサを与えて狭い場所に押し込めるのではなく、各々の動物に違ったエサを与えて自由度のある環境を整える。
それがBという組織なのだ。
「いろいろな細胞が集まって、全体として何となくBとなっているのが理想」とSが語るように、個性集合体である点は、Bの組織を語る上で欠かせない要素だ。
自動車や家電などの企業とかかわっていると、九〇年代を通して構造改革を進め、新世紀に入ってから、組織としての創造性に力を入れ出しているところが目につき始めた。
九〇年代の負の遺産を整理して、企業としてクリエイティブな方向に挑戦する。
長いことお付き合いしていると、そういうトップマネジメントの方針転換に対して、社員のマインドが前向きに変化してくるのがわかるからおもしろい。
日産自動車がリバイバルプランのなかで、思い切って「デザイン」を前面に打ち出したクルマを次々に発表している。
「マーチ」や「キューブ」が快進撃を続けているのは、言及するまでもない事例だ。
また、松下電器産業が、パナソニックデザイン社として分社化し、改めて広い意味でのデザインに力を入れ出している。
「くらし生活センター」を作ったり、アーティストや学生とコラボレーションしたりと、今までよりソフトで開放的なイメージが発信されている。
「ブランドは魂であり、デザインは身体である」とは、社長である植松豊行氏にお話をうかがった時に、印象に残った言葉だ。
個人的には、プロダクツのなかでも、家電のデザインがよくなって欲しいものと、勝手な思いを抱いてきた。
植松の話のなかからは、大企業のなかで分散しがちだったデザインの考え方を収斂させること、夢や憧れをクリエイションする重要性を認識することなど、企業が抱えているデザインの課題に真摯に取り組む姿勢を強く感じた。
松下のケースでは、現場のデザイナーの方と話していても、以前より元気を感じるようになった。
新しいデザインの商品について、目を輝かせて話してくれる。
外部とかかわったプロジェクトについて、誇らしそうに語ってくれる。
そこからは、「これしかやれない」ではなくて、「ここまでできた」という創造的な力を感じる。
こういった動きは、必ずや使い手である消費者に伝わっていくに違いない。
二人一人が自立したプロであることBの採用時に、Sが必ず質問することはひとつだけだ。
それは「あなたは強運かどうか」ということ。
面接される相手にすれば、ちょっと毛色の変わった設問だ。
しかし、「自分は強運」と答える人は、必ず前向きな姿勢を持っている。
ゆえに、自分から何か一歩を踏み出せる人、そういう人材こそ、Bが求めている人だというSの考えは明快だ。
一歩踏み出せるとは、すなわち自分から自主的に仕事に参画する意志を表してもいる。
上に「やらされている」ではなく、自分が「やっている」という意識は、必ずや組織を活性化させていく。
「一人一人の個性を活かしたマネジメント」とは、よく謳われるテーゼだ。
しかし、それは、一人一人が仕事人として自立していること。
プロとして食べていけるくらいの専門性を持っていること。
極論を言えば、この二つが揃っていることが必要ではないだろうか。
「いろいろなベクトルを持っている人材がいるので、ひとつの方向づけをして無理をさせると死んでしまう」というSのコメントには、社員一人一人の個性を。
園長”として大切に育もうという意図が見える。
これからの企業には、単に売上げを上げる、利益を拡大するという目標だけでは、人はついていかない。
仕事のなかで、自分がモチベーションを保てる要素、将来の夢を描けてそれに向かって少しでも近づけるステップそれらが見えている企業は人を惹きつける。
トップの明確な企業としての理念を、末端まで行き渡らせることが、ますます必要になってくるだろう。
組織メンバーの個としての創造性を、最大限に発揮させるにはどうすればいいのか。
ビームスでは、当たり前のように遂行されてきたマネジメントを、今は、大企業が遂行し始めている。
Bらしい販売力が課題Bには、S始め、実に魅力的な人材が多い。
取材に対しても、忌憚のない話をざっくばらんにしてくれる。
影も日向もすべて曝け出してくれる姿勢は、他企業では、なかなか見られないものだ。
その風土は、本社オフィスやプレスルームにいても、おのずと伝わってくる。
きびきびとした空気や、自由間達な雰囲気にあふれているのだ。
洋服や仕事が大好きだ。
だからBにいる。
これからも次なる夢に向かって進んでいく。
自分だけでなく各々の好きなことができていけばいいている。
実に、人間味のある魅力的な企業だと思う。
そんな意識をマネジメント層が持つしかし、気になるのは、それが売り場で、必ずしも同じように機能していないことだ。
もちろん、店に足を踏み入れた時の挨拶、商品を購入するにあたってのやりとりには、丁寧な姿勢を感じる。
店によっては、適切なタイミングで声をかけてくれて、商品について説明とアドバイスをしてくれる。
訪れるお客にとっては、心地よい場であり時間である。
欲しい商品を手に入れても、あるいは買わなくても、またこようと思うのは自然の理だ。
一方で、声をかけて欲しいのに他の仕事をしていて全然気がつかない。
質問しても、説明が通り一変で気持ちの深さが感じられない応えが返ってくる。
一所懸命な姿勢はありそうだが、すべての対応に素人っぽさが先に立ってしまう。
全国のいくつかの店に足繁く通っていて、そんなことが何回かあった。
私は、あまり「店の常連」になって、販売員と懇意になることが好きではない。
だから、好きなブランドでも、できるだけいろいろな場所で買うように心がけている。
そんななかで、販売員の優秀さで驚くのは、「ジュンヤーワタナペ」。
一度、買った店の販売員が他店に移っても、一度しか訪れていない私の顔を覚えていて、「あの時にあのジャケットを買った方ですよね」と声をかけてきたりする。
しかもそれが、一人や二人の販売員ではないのだ。
また、洋服一点一点の説明も細かく行き届いている。
そこからは、本当に自社の洋服を愛している姿勢が伝わってくるのだ。
これが、販売という場では、何より必要なことだと思う。
もちろん、Bでは、私自身がその店のターゲットとずれているため、販売員も接客しづらかった側面もあるだろう。
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